会長ご挨拶
21世紀、日本が直面する問題は、国際化・情報化・少子高齢化・都市化といわれ、そのなかでスポーツが果たす役割は何かを探ることが、体育学(健康科学)の研究・教育の立場にいる者の命題です。
その背景から、例えば少子高齢化に対応するためには、健やかな心と体の育成が必要であり、誰もがお年寄りを喜んで支える気持ちと活力を育まなければ、明るい社会が期待されるはずがありません。国際化においても、仲間と共に生きる心が求められます。自分のことしか考えず、すぐに「キレル」若者の多い昨今、殆どの資源・エネルギーを輸入に頼っている日本の国際化を支えられることはできません。仲間と共に生きようという「健やかな心」と同時に「健やかな体」の育成も忘れてはなりません。情報化や都市化は、文明の進歩の産物であり、文明の進歩は生活の利便性を高めました。今日では労働を機械やロボットに任せたことで、人間の労働の減少が余暇時間を増大させ、その余暇によって豊かさや幸福感を実感させようとしました。しかし、これは文明の進歩の恩恵ではあっても、一方、生活のなかに自然と一体であった身体的刺激の消失という問題を含みました。出生時の細胞数は約四兆であり、成人では約五十兆になります。これがいわゆる発育・発達ですが、正常な発育・発達を遂げる為には、細胞に対する適度な継続的刺激が必要です。20歳前後をピークに退化が始まり脳細胞は加齢と共に死にはじめ、老化が忍び寄る。適度な身体運動を継続することは、寝たきりを予防し、脳細胞を刺激することにより、呆け防止につながり、結果として介護されぬ人生を可能にします。厚生労働省の経済試算では三十兆円を超す医療費の削減となり、若者への負担も減少するといわれています。つまり、労働減少に加えて、テレビ・PC・ゲームなど、部屋の中に閉じこもるライフスタイルが増加している現在、スポーツが果たす役割は、単に勝敗の行方以上に、予防医学の主役となり得ることは自明です。まさに、予防医学教育こそ重要な国家プロジェクトであると言えましょう。
「健やかに成長し、健やかに老いる。」理想の生き方は、身体的刺激を意識的に与えるライフスタイルをリ・クリエイト(再創造)しなければなりません。この予防医学の観点から薬や病院に頼らない健康づくりの必要がクローズアップされてきた今日ですが、「継続」こそが重要なキーワードであり、そのモチベーションの維持こそが重要な課題となってきました。
そこで、その課題をクリアする選択肢のひとつに「インドア」から「アウトドア」への導きという提案です。その提案の基盤は、専門の指導員のもと、正しい予備運動をすること、身体に寄与する運動方法を指導すること、事故を忌避する指導をすることが大切になってきます。さらに、そのプロセスで自然と共生することから、地球上の自然を守る意識の高まりも期待できます。
いずれも、本協会が皆様の人生の生きがいの支えになることを願っております。
一般社団法人アウトドアフィットネス協会 会長 小峯 力