トレイルランニング
トレイルランニング 安全管理ガイドライン
1.経緯
アウトドアフィットネス協会では、自然と対峙することによる危機回避や事故を未然に防ぐ為の正しい知識習得の為の啓発活動を展開しています。本協会では安全管理体制の充実を図る為に安全管理マスターガイドラインを策定していますが、更に詳細を定めたトレイルランニングにおける安全管理ガイドラインを策定することにいたしました。本トレイルランニング安全管理ガイドラインはトレイルランニングを実施するにあたって「安全対策・環境保全・地域共生」の3つを柱とし良質なプログラムを提供する事を目的にしています。そのため個別の大会等の競技実施時に対しては対応していないので留意をお願いいたします。本協会ではトレイルランニング安全管理ガイドラインを適時改正しより良いガイドラインを作成して参ります。
2.ガイドラインの目的
トレイルランニングの健全な普及および本協会会員の安全対策・環境保全・地域共生レベルの向上を図ることをガイドラインの目的としています。
3.基本理念
本協会およびトレイルランニング協議会が目指しているのは、参加される方の満足度はもちろんのこと、参加者全ての安全確保(安全対策)と活動の場となる豊かな自然と多様な生態系を維持・向上させること(環境保全)、さらには周辺に暮す皆さんに認められ、喜んでもらえるような事業(地域共生)でなければなりません。
■地域共生ガイドライン■
トレイルランニング協議会の活動に対する理解を得るとともに、地域の資源を活かし将来へ継げる事を目的に地域共生ガイドラインを設けます。
1.地域生活・文化・景観への配慮
a.プログラムを催行する場合、地域の文化風習を重んじる内容とする。
b.プログラムを催行するにあたり、公民館長や有識者・公共機関等への確認・協議を行う。
c.現地で聖域とされている場所や狩猟場、漁場などへの立ち入りを控える。
d.漁獲や採取など地域住民の生活を脅かす行為をプログラムとしてはならない。
e.地域の景観を著しく損なう行為はしてはならない。
2.地域への還元
a.地域が失った知識や技術などの資源を再生し次世代へ継承する事を念頭に置くように心掛ける。
b.使用するフィールドの定期的な清掃活動など地域環境の改善に積極的に取り組む。
c.地域活動に積極的に参加し、協力を惜しまない。
d.協議会の考える環境保全を周知するプログラムの開催や啓発活動を実施する。
3.公共のマナーを守る
a.公共の場所を使用する際は、周囲の迷惑にならないよう注意する。
b.集落や農地など地域住民の生活空間へ立ち入る際は、プライバシーへの配慮を図る。
c.活動中に出したゴミは持ち帰り処理することとする。
d.喫煙については、場所や吸殻の処理などに十分注意する。
■安全対策ガイドライン■
トレイルランニングでの事故を防止するため、安全対策基準のガイドラインを設ける。
1.参加者情報について
事前に次の事項の書類を明記してもらう。情報は最低期限1年以上保管する。個人情報の取扱いには十分注意する。
a.本人氏名、住所、年齢、連絡先、緊急連絡先
b.(免責同意書)
c.健康状態・既往歴など体調に関する情報
d.未成年者は保護者の同意書
2.引率人数について
a.参加者全体を把握でき、なおかつ緊急時において適応できる適切な人数の設定を行う。
b.参加者の年齢や体力、コンディション等に応じて適切なガイド数を確保する。
3.気象について
a.常に天候や海況を把握し、無理をせず安全最優先に努める。
b.気象庁が発令する警報・注意報及び海上保安庁の防災情報を確認し、プログラムに影響が懸念される場合は活動を控える。
c.場所によって気象が異なることがあるので、注意深く周りの状況判断に努める。
d.日ごろからフィールドの観天望気に努め、判断の一助にする。判断となる情報は各会員に伝達し、共有する。
e.波浪・強風・雷注意報が出ている場合は、プログラムの変更または中止とする。
4.活動について
a.開始前に参加者に対し安全面への心構えなどについて説明を行う。
b.参加者の体調をチェックする。
c.参加者の経験の有無、体力・年齢などを把握し、フィールドのコンディションをチェックしながら、安全を最優先したコースプランを立てる。
d.トラブルを未然に防ぐため準備体操やストレッチなどを行う。
e.安全の基本装備(GPS付携帯電話、予備電池、救急箱などを防水ケースに入れる)を準備する。
f.活動の内容を事前に第三者へ伝える。また、終了後の報告を怠らない。
g.活動中において、定期的に気象庁の情報を入手したり状況を第三者へ伝える。
5.緊急時の対処について
a.緊急事故発生時は、その場でできうる限りのレスキューを施し、関係機関(消防119、海上保安庁118、警察110)と当協議会本部にすみやかに連絡する。
b.人命を最優先に関係機関、会員、地域などと連携・協力をして最善の努力をする。
c.会員は緊急連絡網を活用して情報を共有し、迅速な救助体制をとる。協力を惜しまない。
d.事故を想定し、事前防止の対策を講じる。
6.ガイドの資格について
a.安全法や救急蘇生法などの講習や訓練を定期的に受ける。
b.常に安全スキルのレベルアップに努め、訓練を重ねる。
c.ガイドは心身ともに万全の体調で業務にあたること。
■諸注意■
1.事前説明
a.フィールドの特性(危険箇所、トレイルの状況、風雨雪の影響など)を説明する。
b.フィールドの環境保全について説明する。
2.基礎練習
a.トレイルでの走り方等の基礎テクニック
3.実践
a.使用するフィールドは必ず事前に調査し安全を確認する。
b.参加者の技術レベル・体力などを的確に判断し、無理のないツアーを開催する。
4.使用する器材・装備
a.トレイルランニングのシューズやウエアには様々なタイプがあり、その特徴と特性を熟知しフィールドに適した装備を使用する。
b.トレイルランニングのタイプやフィールドによっては、長時間水分補給ができない場合があるので予め余分の食糧と水分を持ってから出発する事。
c.器材・装備のトラブル防止のため、常にメンテナンスを怠らないこと。
■環境保全ガイドライン■
持続可能なトレイルランニングの発展のため、環境保全基準のガイドラインを設ける。
1.事前説明
フィールドの特徴や生態系を参加者に説明し、負荷を与えないよう、協力してもらいながらプログラムを催行する。
2.技術指導
正しい道具の使い方や技術を指導することで、自然環境に与えるダメージを最小限に防ぐ。
3.参加者数
自然に対してできるだけ負荷を与えないような参加者数とする。
4.器材
自然への負荷の少ない、そのフィールドにふさわしい器材を使用する。
5.プログラム設定
a.自然に対してできるだけ負荷を与えないように、潮汐・季節を考慮したプログラム設定を行う。
b.自然を利用する総時間を抑制する事により負荷の軽減を図る。
c.一年のうちの一定期間をフィールドに立ち入らないようにするなど、動植物の回復の期間を設ける。
6.フィールドの選定
貴重な動植物が認められるなど自然保護が優先される地域においてはプログラムのフィールドとして利用しない。
7.動植物の持ち出し
条例で持ち出しが禁止されている動植物以外でも、自然へ何らかの負荷を与える可能性がある動植物は持ち帰らせない。
8.餌付けの禁止
動物への餌付け行為は、動物の健康を害し、生態系のバランスを崩し、また、水質の汚染なども招くために、これを行わない。
9.啓発
a.参加者が、環境問題や自然保護に対して意識が上がるように努める。
b.参加者以外の人に対しても、自然に負荷を与えている行動をしているのを見た場合、自然に対するマナーを伝える。
c.地域住民に対して、自然のことや自然との正しい付き合い方を知ってもらうための啓発活動を積極的に行う。
その他
a.干潮時の干潟などを歩く場合、同じ場所を歩き踏み固めることで生物に影響がでないよう、毎回ルートを変えるなどの配慮をする。
b.水鳥などの野鳥を驚かせないように、季節やフィールドを考慮してプログラムを組む。
c.自然に落ちている種子の持ち帰りや植樹を行わないようにする。
d.同じ場所を歩き踏み固めることで生物に影響がでないよう、毎回ルートを変えるなどの配慮をする。
e.既に他者によるルートを示すため目印があるところには新たな目印をつけない。
f.景観を損ねるような派手な目印をつけない。
g.ルートを示すロープやビニール紐は利用が終わったら、付けっぱなしにせずに自らの責任で回収する。
■フィールドでの活動■
1.事前説明
a.ルート及び行程を確認する。
b.フィールドの特性(危険箇所・危険生物など)、行動中の注意点を説明する。
c.野生動植物の保護、フィールド環境保全について説明する。
2.フィールドでの実践
a.必ず現地の下見をして危険箇所・危険生物の存在を確認しておく。
b.落雷・豪雨・日差しの強弱などその日の天候を予測し行動に役立てる。
c.装備の点検をする。
d.参加者の年齢・体力および疲労度に配慮し、無理のないツアーを開催する。
3.装備・使用器材
救急医療セット、携帯電話、コンパス、雨具、防寒具、食糧、水分等の詳細を予め参加者に伝えておく事。
4. 緊急時の対策
a.予定票を作成して第三者に予め知らせておく事
b.引率者の氏名、パーティーの人数、登山ルート、開始時間、下山予定時間を第三者に連絡する。(予定時間を過ぎても戻らない場合、引率ガイドへの連絡を試みるように伝える。連絡が取れない場合は関係機関に連絡後、捜索準備を開始する。)
c.事故者および他の参加者の安全確保
d.二次被害が起きないように安全な場所へ移動する。参加者は引率ガイドの指示で動くことを再度徹底する。
e.ガイドはそれぞれのケースに従って適切な指示を出す。
f.関係機関への連絡
g.事故が起きて自力で下山ができない場合は、現在地から近いピークに登るか、山を下り、速やかに警察および消防等しかるべき機関に連絡する。